野生生物を守る条約・法律(ワシントン条約)
ワシントン条約とは
野生動植物は、地球の自然を構成する重要な要素であり、その絶滅や減少は自然環境に多大な影響を及ぼし、自然界のバランスを失わせてしまいます。人工的に創り出すことのできない、かけがえのない動植物の絶滅を回避するため、野生動植物の国際取引の規制が求められ、1973年にアメリカのワシントンにおいて「絶滅のおそれのある野生動植物種の国際取引に関する条約」が採択されました。これがワシントン条約=CITESです。日本は1980年にこの条約を批准しました。ワシントン条約では、国際取引が規制される野生動植物の種を「附属書T・U・V」に区分して掲載しています。附属書Tに掲載される種は最も絶滅が危惧されているものであり、商業目的の国際取引が原則的に禁止されています。
附属書T
国際取引の影響下で絶滅のおそれが生じている種は、附属書Tと呼ばれるリストに掲載され、国際商業取引は原則禁止されます。ただし、非商業目的(学術研究等)のための取引は輸出国および輸入国がそれぞれ発行する輸出許可書と輸入許可書を得れば許可されます。商業目的であっても、条約締結前あるいは付属書T掲載前に取得したものは適用除外され、また飼育繁殖したものは附属書U掲載種と扱われるなど例外的に取引が許される場合があります。
附属書U
現在絶滅のおそれはないが、将来そうなりそうな予備軍的な種は附属書Uに掲載されます。取引は許されますが、輸出の際に輸出国政府のワシントン条約管理当局の輸出許可書が必要になります。
附属書V
自国の政策上、国際取引を規制してその保全を図りたい種は、それぞれの国が附属書Vに掲載することができます。掲載種の国際取引については、掲載国の輸出許可書、または掲載国以外の国から輸出されたことを証明する原産地証明書が必要です。
ワシントン条約附属書
| 附属書T | 約800種 | オランウータン(ペット) ゾウ(象牙が印鑑やアクセサリー) トラ(骨などが漢方薬の原材料・強壮剤、毛皮が装飾品) サイ(角が漢方薬の原材料) ツキノワグマ(胆のうが漢方薬の原材料) クジラ(食用) コンゴウインコ(ペット) タイマイを含む全てのウミガメ(べっ甲製品、剥製) ワニ類多数(革製品) オオサンショウウオ(ペット) チョウザメ類多数(キャビアを食用) アジアアロワナ(ペット) サボテン類多数(観賞用) ラン類多数(観賞用) アロエ類多数(観賞用) など |
|---|---|---|
| 附属書U | 約30,000種 | カバ(牙が置物やアクセサリーの原材料) ホッキョクグマ(剥製) 付属書T・掲載種以外のサル類全て(実験用、ペット) 付属書T・掲載種以外のネコ類全て(毛皮、ペット) 付属書T・掲載種以外のオウム類全て(ペット) アジアハコガメ類全て(ペット、食用) カメレオン |
| 附属書V | 約200種 | カナダのセイウチ(牙が置物やアクセサリーの原材料) ガーナに生息する種多数、など |
* 附属書は 経済産業省HP で閲覧できます
この規制に違反して野生生物を日本へ持ち込もうとすると…
条約に違反すると日本の「外国為替及び外国貿易法」「関税法」に違反したことになり、処罰されます。税関で輸入が差し止められます。「知らなかった」は言い訳になりません。そして「関税法」違反として、没収と罰金の支払いを通告されます。拒否すれば検察官へ告発され、刑事裁判になります。税関でチェックを受けずに持ち込んだ場合の罰則は、5年以下の懲役又は50万円以下の罰金です。さらに、条約違反の輸入は外国為替及び外国貿易法違反ともなり、100万円以下の罰金または1年以下の懲役の罰則が定められています。ワシントン条約対象種は、3万種以上にものぼります。海外で野生生物やその製品を買ったり、もらったりするときは、慎重な態度をとりたいものです。
種の保存法にもとづく国内規制の内容
| 附属書T | 条約上、例外的に輸入が許されたもの、国内で繁殖したとして許可を受けたもの以外は国内取引禁止 |
|---|---|
| 附属書U | 規制なし |
| 附属書V | 規制なし |
附属書T掲載種を国内で買ったら…
ワシントン条約の付属書Tに掲載されている野生生物については「絶滅のおそれのある野生動植物の種の保存に関する法律」(「種の保存法」)で、国内取引も原則的に禁止されています。ただし、ワシントン条約上の例外措置として輸入されたものについては、政府に登録をして売買することができます。条約違反で輸入されたものを国内で買ったり、登録されていないものを買ったりすると「種の保存法」違反になります。ただであげたりもらったりする場合も同様です。1年以下の懲役又は100万円以下の罰金という罰則があります。
日本は野生生物の消費大国
日本は野生生物を、装飾品、置物、印鑑、食材あるいは薬などさまざまな製品の原料として、また珍しいペット、観葉植物などとして利用してきました。 例えば、アクセサリーやめがねのフレームに使われているべっ甲は、タイマイという絶滅のおそれのあるウミガメの甲羅です。ペットではリクガメの仲間や熱帯地域の魚が、観葉植物ではランやサボテンの仲間が人気があります。これらのうち、日本に生息しない生物は大量に輸入されているのです。また腹痛などの薬に使われる熊胆(ゆうたん)あるいはクマノイは、クマの胆のうです。クマの仲間の大部分は絶滅のおそれがあります。日本国内にもツキノグマとヒグマがあわせて1万頭程度生息していますが、クマノイを採る目的もあって年間2000頭程度が狩猟などで殺されています。とくに2006年には約5000頭が有害駆除で殺されました。
日本国民一人あたりの野生生物輸入件数は世界第1位
日本がワシントン条約上必要とされる許可証を得て合法的に輸入を行っている件数は年間30,000件にものぼります。日本は、「野生生物消費大国」といっていいでしょう。
▼ワニ(クロコダイル)の革製品の輸入数 上位5カ国 2002年
| 国名 | 輸入数 | |
|---|---|---|
| 第1位 | 日本 | 46,960個 |
| 第2位 | アメリカ | 30,615個 |
| 第3位 | スイス | 12,486個 |
| 第4位 | シンガポール | 7,394個 |
| 第5位 | タイ | 5,233個 |
| 輸入総数 | 127,742個 | |
UNEP-WCMC CITES Trade Database
ワニ(クロコダイル):クロコダイル科(Crocodylidae)
革製品:garments 、leather products ( l )、leather products (s)、pairs of shoes
▼リクガメの生体の輸入数 上位5カ国 (2002年〜2004年)
| 2002年 | 2003年 | 2004年 | ||||
|---|---|---|---|---|---|---|
| 国名 | 輸入数 | 国名 | 輸入数 | 国名 | 輸入数 | |
| 第1位 | アメリカ | 44,985匹 | アメリカ | 42,722匹 | 日本 | 32,218匹 |
| 第2位 | 日本 | 35,300匹 | 日本 | 31,172匹 | アメリカ | 26,415匹 |
| 第3位 | ドイツ | 11,500匹 | フランス | 12,315匹 | ドイツ | 8,024匹 |
| 第4位 | フランス | 8,726匹 | ドイツ | 9,168匹 | イギリス | 7,429匹 |
| 第5位 | 台湾 | 4,675匹 | イタリア | 7,273匹 | スペイン | 6,761匹 |
| 輸入総数 | 136,555匹 | 141,966匹 | 117,612匹 | |||
UNEP-WCMC CITES Trade Database
リクガメ:リクガメ科(Testudinidae)
生体:live






