【CITES SC74】疑わしいトラ繁殖施設の実地調査を!

野生のトラ

 野生のトラは世界に3,855~4,892頭と推定されていますが、飼育されているトラは12,574頭(2018年初頭)で、野生の3倍にもなります[※]。トラの繁殖施設の中には、保護を目的としたものだけでなく、観光や毛皮や虎骨酒のような伝統薬の材料などのために商業的に繁殖しているものもあります。例えばタイにあったタイガーテンプルは、寺院で飼育しているトラと触れ合えることで有名な観光地で、トラの虐待や死体の違法販売が問題になり廃止されました。

 トラはワシントン条約附属書Ⅰ掲載種ですので、国際取引は禁止されていますが、条約事務局に登録した施設で繁殖した個体は、附属書Ⅱの扱いになり、輸出国政府機関発行の繁殖証明書があれば輸出が可能です(同条約第7条)。一方、商業規模でトラを繁殖している締約国に対し、飼育個体数は野生のトラの保護に資する水準にすることと、身体部分の取引のためにトラを飼育繁殖させるべきではないという決定をしています(Decision14.69)。
 飼育トラの数が増え、条約で登録した施設が前述のタイガーテンプルのように違法取引の隠れ蓑になっていないか、厳格な監視が必要になっています。

 前回2019年の締約国会議で、疑わしいトラの繁殖施設を専門家が調査に行くという決定がなされましたが(Decision 18.108)、新型コロナウィルスの感染拡大で実行が困難でした。
 そのためワシントン条約第74回常設委員会に向け、JWCSを含む世界のNGO53団体は、具体的な調査項目を提案し、可能な限り早く専門家による実地調査を行うよう、2021年8月に条約事務局に要望書(英文PDFを送りました。

常設委員会は3月7日から11日までフランスのリヨンで開催され、Youtubeで中継されます。

[※] UNODC World Wildlife Crime Report  2020