地域の活動・CSRを生きもの目線で見直そう
誰かが善意で始めたり、マスコミが美談として取り上げた活動が、生きものには有害な場合があります。JWCSは、「野生状態にある生物界の維持存続」の点から、これらの活動を考え、まとめました。
小冊子の内容は、下記の「生きもの目線で活動チェック 全文」でご確認いただけます。
生物多様性保全の教育・普及のためにこの冊子を利用したい方は、送料のみご負担いただき、無料で配布させていただきますので、お問い合わせフォームより、ご連絡ください。
(JWCSの考え方は『野生生物保全事典』緑風出版 をご参照ください。)
動物を守ろうとしている食品とは
世界の森林減少の27%は大豆、牛肉、パーム油などの商品作物の大量生産が原因であるという論文が発表されました。そしてアフリカでは農地転用が森林減少の大きな原因になっています [1]。
「野生生物が大事か人間の食料が大事か」と対立させる考え方がありますが、一方で「人間も野生生物も」という努力も存在します。日本での例として、兵庫県でのコウノトリの再導入とコウノトリが生息できる農村の生態系の維持、そしてコウノトリの生息地となっている水田で生産された「コウノトリ育むお米」をブランドとして販売する取り組みが挙げられます。
この「コウノトリ育むお米」のように、農業と野生生物の生存を両立させる取り組みは、世界各地で行われています [2]。
このポスターは、東京デザイン専門学校の企業課題のクラスに所属している荻野千秋さん(1年生)が2018年にデザインしました。
●コーヒー
インド、西ガーツのコーヒー会社は、コーヒーの木を天然木の下に植え、トラ、アジアゾウ、ヒョウなど絶滅危惧種の生息地になっている農園のコーヒーをブランド化しています[3]。提携農家の一人は「サルやジャコウネコがコーヒーの実を食べても追い払わない。私は何らかの形で補償をされているから」と新聞のインタビューに答えています。農園の生物多様性がコーヒーの価格につながっていることを農家が実感しいることが分かります [4]。
●紅茶
ゾウはお茶の葉を食べませんが、餌場への移動の途中に茶畑で休息します。インド、アッサム州ではゾウと人間がお互いに危害を加えないようにしたり、ゾウが農薬を含んだ水を飲んだりしないようにするなど配慮した茶畑で生産された茶葉を、ブランド化しています[5]。
●カカオ
WCSマダガスカルは、キツネザル類が生息するマキラ自然公園の周辺の住民の生活のため、カカオ、バニラ、クローブなどの持続可能な生産を支援しています[6]。
●米
カンボジア、シェムリアップの農家が生産する有機ジャスミン米は、絶滅危惧種のオニトキをシンボルにしてブランド化しています。この地はバンテン(野生のウシ)など60種以上もの絶滅危惧種が生息する国立公園への密猟者や伐採者の通り道にあり、農家は国立公園の保護に協力しています[7]。
●バナナ
バナナ栽培は農薬が周辺の環境に影響を与えるだけでなく、排水を通じてサンゴ礁へ影響を及ぼすことが問題になっています。危険な農薬の使用を止める、有機栽培にするなどで認証を得たバナナが販売されています[8]。
これらの商品には、日本では買えないものもあります。しかし、どのように生産された商品なのかに関心を持って買うものを選んだり、消費者の声として企業に環境への配慮を求めたりすることは、遠くの国の野生生物を守ることにつながっています。
参考文献
[1] Philip G. Curtis1, Christy M. Slay1, Nancy L. Harris, Alexandra Tyukavina, Matthew C. Hansen(2018)”Classifying drivers of global forest loss” Science 14 Sep 2018:Vol. 361, Issue 6407, pp. 1108-1111
[2] Wildlife Friendly http://wildlifefriendly.org/buy-wild/
[3] コーヒー Wild Kaapi https://wildkaapi.com/
[4] The Hindu “How wildlife-friendly is your brew?” 2017.6.2
https://www.thehindu.com/life-and-style/homes-and-gardens/worlds-first-certified-wildlife-friendly-coffee/article18706346.ece
[5] 紅茶 Elephant Friendly Tea https://elephantfriendlytea.com/
[6] カカオ https://madagascar.wcs.org/Wild-Places/Makira-Natural-Park.aspx
[7 ]米 http://ibisrice.com/
[8] バナナ https://www.rainforest-alliance.org/lang/ja/work/agriculture/bananas
http://www.fyffes.com/our-passion-for-fruit/organics-and-fairtrade#organics
国連世界野生生物の日(World Wildlife Day)
ワシントン条約(絶滅のおそれのある野生動植物種の国際取引に関する条約)は1973年3月3日にワシントンD.C.で採択されました。これを記念し、3月3日を野生生物の日とすることを2013年の国連総会で決議し、以後毎年世界で記念行事が開かれています。JWCSでは記念イベントの他にSNSを使ったキャンペーンを行っています。
消費から変える野生生物の未来 絶滅のおそれのある野生生物とSDGs
「生物多様性保全を促進する消費・ライフスタイル形成、普及に関する調査研究・啓発活動~普及啓発の論拠の点検から持続可能な消費・生産(SDGs目標12)、地域活性化との連携・展開を目指して~」の2018年度の成果として、一人一人の消費活動を変えることで、野生生物の保全や持続可能な社会の実現に役立てることを普及するためのポスターを作成しました。下記テキストリンクよりダウンロードすることができます。
消費から変える野生生物の未来 絶滅のおそれのある野生生物とSDGs
(約2.2MB)
消費・生産から生物多様性保全を考えるガイドブック
「生物多様性保全を促進する消費・ライフスタイル形成、普及に関する調査研究・啓発活動~普及啓発の論拠の点検から持続可能な消費・生産(SDGs目標12)、地域活性化との連携・展開を目指して~」の成果として、世界の生物多様性を損失させないようにするには、日本での生産や消費をどのように変えていかなければならないのかを解説したガイドブックを発行しました。下記テキストリンクよりダウンロードすることができます。
前半ダウンロード 生物多様性保全と持続可能な消費・生産ガイドブック
中半ダウンロード 生物多様性保全と持続可能な消費・生産ガイドブック
後半ダウンロード 生物多様性保全と持続可能な消費・生産ガイドブック