理論研究会
「NPO法人野生生物保全論研究会(JWCS)」の前身である任意団体「野生生物保全論研究会」は、1990年春、その時々の問題や保全論の背景となると思われる科学、哲学、思想などを検討する会として発足し、「理論研究会」を立ち上げました。
日本の自然保護運動は着実に進展しているものの、これらの運動が本当に日本の文化として定着し、運動の実をあげるためには、自然保全・野生生物保全が確かな理論的根拠を持ち、論理性に貫かれたものになることが重要だと考えたからです(『野生生物保全論研究会会報』No.2 1995.2.27 より要約)。
この理論研究会の議論を元に執筆した論考およびセミナーの記録をご紹介します。
会報に掲載した文書
2023年
会報No.100 | 野生種の支配者は誰? | 小川 潔 |
---|---|---|
保全活動としての生計支援を考える | 鈴木 希理恵 |
2022年
会報No.97 | 水棲種の附属書掲載提案における議論 | 真田 康弘 |
---|---|---|
CITES における「持続可能な利用」という言説の行方と二つの多様化について | 遠井 朗子 | |
会報No.95 | 動物園における動物福祉と保全教育実践 | 並木 美砂子 |
2021年
会報No.94 | 動物園における動物福祉を基盤とした保全教育実践の展望 | 並木 美砂子 |
---|---|---|
会報No.93 | 2050 年自然の回復・復元に至る過程私論 | 小川 潔 |
会報No.92 | 日本の国際捕鯨委員会(IWC)からの脱退と商業捕鯨の再開に至る政治外交史的考察(続編) | 森川 純 |
2020年
会報No.91 | 人獣共通感染症と実験動物 | 並木 美砂子 |
---|---|---|
ライチョウの生息域外保全に思うこと | 小川 潔 | |
会報No.90 | コロナ危機と生物多様性~ポストコロナ時代の世界展望 | 古沢 広祐 |
日本の国際捕鯨委員会(IWC) からの脱退と商業捕鯨の再開に至る政治外交史的考察(後編) | 森川 純 | |
会報No.89 | 日本の国際捕鯨委員会(IWC) からの脱退と商業捕鯨の再開に至る政治外交史的考察(中編) | 森川 純 |
ワシントン条約第18回締約国会議報告~アンドロイドはアフリカゾウの夢を見るか? | 遠井 朗子 |
2019年
会報No.88 | ワシントン条約第18回締約国会議報告 | 真田 康弘 |
---|---|---|
象牙とローカルコミュニティ | 鈴木 希理恵 | |
会報No.87 | 日本の国際捕鯨委員会(IWC)からの脱退と商業捕鯨の再開に至る政治外交史的考察(前編) | 森川 純 |
会報No.86 | フェアトレードの可能性~野生生物保全との関連で | 萱野 智篤 |
2018年
会報No.85 | ワシントン条約第70回常設委員会報告-イワシクジラとワシントン条約 | 真田 康弘 |
---|---|---|
会報No.84 | 特集『広大で多様で歴史のあるアフリカをとらえる』 | 森川 純 |
会報No.83 | ワシントン条約第69回常設委員会報告-第69回常設委員会の概要 | 遠井 朗子 |
ワシントン条約第69回常設委員会報告-海産種とワシントン条約 | 真田 康弘 |
2017年
会報No.82 | 書評論文『自然は誰のものか-住民参加型保全の逆説を乗り越える-』[補遺-本書刊行の意義] | 森川 純 |
---|---|---|
会報No.81 | 書評論文『自然は誰のものか-住民参加型保全の逆説を乗り越える-』[後編] | 森川 純 |
会報No.80 | 書評論文『自然は誰のものか-住民参加型保全の逆説を乗り越える-』[中編] | 森川 純 |
2016年
会報No.79 | 書評論文『自然は誰のものか-住民参加型保全の逆説を乗り越える-』[前編] | 森川 純 |
---|---|---|
会報No.78 | 野生イルカの展示目的による捕獲問題をめぐって | 並木 美砂子 |
日本の海棲哺乳類:その生態と保全(3) | 粕谷 俊雄 | |
会報No.77 | 日本の海棲哺乳類:その生態と保全(2) | 粕谷 俊雄 |
2015年
会報No.76 | 世界動物園水族館協会からの脱退勧告が意味すること | 並木 美砂子 |
---|---|---|
日本の海棲哺乳類:その生態と保全(1) | 粕谷 俊雄 | |
会報No.75 | 自然界における人間存在を問う | 古沢 広祐 |
2014年
会報No.72 | 自然保護を伝えるには~自然保護教育の原点から考える~ | 小川 潔 |
---|
2013年
会報No.69 | エコツーリズムによる地域振興と野生生物保全 | 山極 壽一 |
---|
2012年
会報No.65 | ポスト3/11の日本において 調査捕鯨の堅持を選択することに政策的妥当性はあるのか(後編) 国益論から見た日本の捕鯨政策-中曽根内閣による政策仕分けの試みと挫折- |
森川 純 |
---|
会報No.65 | ライオンの栄枯盛衰 | 山口 誠之 |
---|
2011年
会報No.64 | ポスト3/11の日本において 調査捕鯨の堅持を選択することに政策的妥当性はあるのか(前編) -周到に準備された結論と「鯨類捕獲調査に関する検討委員会」の関係- |
森川 純 |
---|
2009年
会報No.58 | 野生生物保全と生物多様性保全 | 岩田 好宏 |
---|
会報No.57 | 小原 由美子・ 中村 千秋 |
---|
2007年
会報No.51 | ウガンダにおける野生動物の価値 | 安藤 元一 |
---|---|---|
会報No.49 | CITESの歴史から見たアフリカゾウと日本 | 小原 秀雄 |
書評 『捕鯨問題の歴史社会学 捕鯨問題の歴史社会学 捕鯨問題の歴史社会学 ―近現代日本におけるクジラと人間 近現代日本におけるクジラと人間 近現代日本におけるクジラと人間 ―』 | 森川 純 |
2006年
会報No.47 | NGOに「一寸の虫にも五分の魂」を | 小原 秀雄 |
---|---|---|
会報No.46 | 本の紹介『自然保護の神話と現実-アフリカ熱帯降雨林』 | 小原 秀雄 |
会報No.45 | 野生生物保全思想と教育 | 岩田 好宏 |
2005年
会報No.42 | 本の紹介『動物の命は人間より軽いのか-世界最先端の動物保護思想』 | 本谷 勲 |
---|---|---|
会報No.41 | JWCSと地球の野生物界保全― 自然と社会の変動を見つめて― | 小原 秀雄 |
会報No.40 | 生物商品としての野生生物とCITES | 小原 秀雄 |
2003年
会報No.35 | 日本の外交・海外援助政策と野生生物多様性保全 | 小原 秀雄 |
---|---|---|
日本外交と象牙問題とNGO | 森川 純 | |
会報No.32 | 野生生物保全論研究会にとってのワシントン条約 | 小原 秀雄 |
生物多様性について(連載第3回) | 浦本 昌紀 |
2002年
会報No.31 | ワシントン条約をめぐる「いま」 | 小原 秀雄 |
---|---|---|
生物多様性について(連載第2回) | 浦本 昌紀 | |
会報No.30 | 「捕鯨問題を論じる」を特集するにあたって | 小原 秀雄 |
商業捕鯨を問う | 本谷 勲 | |
会報No.29 | 「ユウタン(熊胆)取引とクマの保全」を特集するにあたって | 小原 秀雄 |
自然における人間を問う | 本谷 勲 | |
生物多様性について(連載第1回) | 浦本 昌紀 |
2001年
会報No.23 | なぜ野生物保全教育が重要か | 小原 秀雄 |
---|
シンポジウム資料集 | 国際的野生生物保護に関わって30年-その光と影 | 小原 秀雄 |
---|
2000年
会報No.22 | ジンバブエにおける”CAMPFIRE”プロジェクトの検証 | 窪田 恵理子 |
---|
1999年
会報No.16 | 象牙取引再開がもたらすもの -「カネ」が再び第三世界の野生生物を支配し始めた- |
小原 秀雄 |
---|
1997年
会報No.12 | 今なぜ「サスティナブル・ユース(持続可能な利用)」を論究するのか | 小原 秀雄 |
---|
1994年
会報No.1 | 会報創刊号 巻頭言/野生生物保全論研究会の発展を目指して | 小原 秀雄 |
---|---|---|
野生生物保全論研究会座談会-野生生物の保全論を考える 林淳一、小原秀雄、本谷勲、山岡寛人 |
JWCS |
小原秀雄 生物多様性を語る
「生物多様性の保全」という言葉が使われだした1990年代の初めから、JWCSの理論研究会は、その概念について議論を重ねてきました。「生物多様性を保全する」といいながら「野生生物保全」にはなっていない保全プロジェクトがあるのではないか――。
そして本来の意味の「生物多様性の保全」が実現するよう、教育普及活動を行っています。
「生物多様性」と和訳された英語の「Biodiversity」という言葉には、dis(分離・拡散)vertere(向かう・行く)、つまり進化の結果さまざまな生きものが地球に存在するという意味を含んでいます。しかし、日本では「多様性」という言葉は単に「種類がいろいろある」という意味でとらえられることが多いのではないでしょうか。そのため「生物の歴史の中で、この生きものがこの場所に生きている意味」や「この生きものが未来に向けて進化していく可能性」といった進化、地史を考慮していない保全活動があるように思われます。人間活動によって生物多様性が失われてきたのですから、野生生物の視点に立って考えると生物多様性保全にはまず「野生の世界は野生のままに」、人間による影響をこれ以上広げないことが重要であるとJWCSは考えています。