【3月8日】ワークショップ:ワシントン条約におけるサメの保全と持続可能な利用
ワシントン条約(絶滅のおそれのある野生動植物の種の国際取引に関する条約:CITES)は、2000年代以降、「持続可能な利用」原則を明示的に導入し、木材、海産種等の生物資源を附属書IIに掲載し、科学的管理に基づく合法的な取引の促進を図る規制レジームへと変貌を遂げつつあります。とりわけ、近年は密猟や違法取引を危惧する原産国がNGOや科学者と連携し、自国の原産種の附属書掲載でイニシアティブを取る動きが進展し、2022年11月、パナマで開催されたCoP19においても、パナマをはじめとした中米諸国がメジロザメ科全種を附属書IIに掲載する提案を主導し、賛成多数で採択されました。
日本はCITESにおける海産種規制には一貫して反対の立場をとり、サメの附属書改正についても留保を付す方針を示しています。しかし、留保は従来通りの取り扱いを永続的に保証するものではなく、賢明な規制戦略とは言い難いように思われます。第一に、留保を付したとしても、留保を付していない他国と取引を行う場合には、条約の許可書等と実質的に同等の文書として、NDFに相当する持続可能な資源管理の証明の提示が求められます(条約第10条、23条)。第二に、CITESの附属書II掲載は取引禁止ではなく、規制当局に資源評価と合法性の証明を求めるものであり、このような規制アプローチの海産種への適用については、条約内で幅広いコンセンサスが生成し、留保を付す国が広がる見込みは多くはないと考えられるためです。
また、CoP19では、電子機器を用いた資源管理ツールやe-システムの構築が参加者の関心を集めており、持続可能でデジタル化された国際取引が、野生生物取引についても普及する可能性が高まっています。
以上を踏まえ、本ワークショップでは、IUCNサメ専門家グループのサラ・ファウラー(Sarah Fowler)氏をお招きして、サメの生息状況に関する最新の科学的評価、及びCITESにおけるサメの規制の科学的、政治的背景についてお話を伺って、CITESの規制レジームの下で、サメの保全と持続可能な利用を確保する意義と課題を検討すると共に、日本の対応と国内実施について、多角的かつ実践的に検討する機会としたいと考えます。
主催:科研費基盤C.【17K0359】【21K01278】「グローバルガバナンスとCITESの変容」研究会(代表:酪農学園大学 遠井朗子)
共催:認定NPO法人 野生生物保全論研究会(JWCS)
日時:2023年3月8日(水)13:00~16:30
場所:早稲田大学早稲田キャンパス14号館514教室
または Zoom ※ハイフレックス方式で実施します。
申込者は後日、動画を期間限定でご覧いただけます。
参加費:無料
お申込み:以下のURLから、3月7日(火)17:00までにお申し込み下さい。
https://forms.gle/fhYgwY5sdBTWNNNbA
webでのご参加には、3月7日(火)17:00以降にZoomのURLをお送りします。
【報告者・報告内容】
趣旨説明 遠井朗子(酪農学園大学) 13:00~13:05
1. サラ・ファウラー(Sarah Fowler)(IUCN, Shark Specialist Group)
「CITES CoP19におけるサメ類の附属書II掲載の意義」13:05~14:25
附属書掲載の科学的、政治的背景、サメの保全と持続可能な利用のあり方について
(※逐語通訳あり)
2. 眞田康弘(早稲田大学地域・地域間研究機構)
「サメの保全と持続可能な利用のための国際的規制と日本の対応」14:25~14:45
3. 鈴木希理恵(認定NPO法人 野生生物保全論研究会 事務局長)
「資源管理ツール・無害証明の電子化(e-NDF)」14:45~15:05
4. 井田徹治(共同通信社編集委員)
「ワシントン条約と日本:海産種を中心に」15:05~15:35
< 休憩 10分> 15:35~15:45
パネル・ディスカッション 15:45~16:30
以上