【CBD COP10レポート】COP10で決まったこと

前回の気候変動枠組み条約の締約国会議(コペンハーゲン会議)と違って、とにかく決まってよかった、よかった・・と終わった生物多様性条約COP10ですが、何が決まったのかを整理してみました。

■グローバル企業のルールが決まった

 1. カルタヘナ議定書(遺伝子組換え生物(LMO)の国境を越える移動に係る措置を規定)の責任及び救済が決まった(名古屋・クアラルンプール補足議定書)。

 遺伝子組換え生物を輸出して、経由地や輸入国の生物多様性にダメージを与えるようなことがあったとき、締約国は責任事業者を特定し、原状回復などを命じる。不安を緩和して遺伝子組み換え生物の輸出入を促進されることが期待されている。
(アメリカ、カナダ、オールトラリアはカルタヘナ議定書を締結していない)

 2.名古屋議定書(遺伝資源へのアクセス及びその利用から生じる利益の校正で衡平な配分・ABS議定書)ができた。

 例えば製薬会社がある国の微生物を使った薬を開発したとき、利用国から提供国へ利益を両国の合意で配分する。その利益には、技術移転など金銭以外のものも含む。また、先住民・地域社会の伝統的な知識(薬草など)の利用も契約の対象になる。

 

■生物多様性の損失を止めるためのルールや計画が決まった

1.2020年までの新戦略計画(愛知ターゲット)

 戦略目標A :「生物多様性の主流化」のため、生物多様性の価値を国や地方の事業や国家勘定などに組み込むこと、生物多様性に有害な補助金などの廃止、自然資源を生態学的限界の十分安全な範囲内に抑えること

 戦略目標B :農林水産業の持続可能な利用、汚染、侵略的外来種、サンゴ礁その他の脆弱な生態系において人為的圧力軽減・最小化

 戦略計画C :2020年までに少なくとも陸域及び内陸水域の17%(現状は陸域の13%・IUCN)沿岸域及び海域の10%(現状は沿岸域の5%・IUCN)を保護地域にする、基地の絶滅危惧種の絶滅・減少の防止、作物・家畜の遺伝子の多様性保護

 戦略計画D :生物多様性・生態系サービスの恩恵がとくに弱者のニーズを考慮して提供されるように、名古屋議定書の施行運用、劣化した生態系の少なくても15%以上の回復と気候変動の緩和、砂漠化防止

 戦略計画E  :国家戦略、行動計画の改定、 持続可能な利用に関する伝統的知識の尊重、科学的知識の共有・適用、この戦略計画のための資金の顕著な増加

2.SATOYAMAイニシアティブ
 生物多様性の持続可能な利用として、日本政府が提案。二次的自然環境の保全の優良事例を集め、その教訓を共有し、途上国に支援を行うもの(環境省資料より)。

 COP10の決定文には、条約の第10条(c)「保全又は持続可能な利用の要請と両立する伝統的な文化的慣行に沿った生物資源の利用慣行を保護し及び奨励すること」と関連し、他の目標やプログラムとの調和、さらなる議論、分析、理解を深めて助成すること、国連MAB計画など他のイニシアチブや活動との相乗効果が書かれている。

3.国連生物多様性の10年
 日本のNGOが発案し、日本政府から提案。2020年までの愛知目標の達成を、締約国だけでなく、国連に広げて推進するため。国連総会(第65回2010年12月)に採択するよう勧告する。

4.政府間科学政策プラットフォーム(IPBES)
気候変動枠組み条約では、科学データを政策につなげるIPCCという枠組みがある。これと同じように生物多様性と生態系サービスについて研究し、政策に反映する枠組みの設立を国連総会(第65回 2010年12月)に奨励する。

5.その他の各議題の決定
資金動員戦略は目標額の決定はCOP11に持ち越し。
ほかにも生物多様性保全に重要な要素、例えば教育普及、バイオ燃料、気候変動、侵略的外来種や、森、海、山岳、半乾燥地帯といった生態系ごとの対策が決められました。

編集途中の決定文書が公表されています。
COP9までの決定文書・COP10の決定も 国連6カ国語に翻訳されてここに掲載されます